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第1回 感情をマネジメントする技術
はじめに
アンガーマネジメント。日本では聞き慣れない言葉かもしれません。あるいは、少しでもこの言葉を聞いたことのある人であれば、「キレやすい人」が受ける
トレーニングか何かというイメージを思い浮かべるかもしれません。しかし、本稿を読んでいただければその認識は大きく変わることでしょう。今、アメリカの
ビジネスシーンの間でブームになっている感情をマネジメントするという意味でのアンガーマネジメントについて、これから数回にわたって紹介していきたいと
思います。
さて、まず考えてみたいことは、感情はビジネス、マネジメントにとって必要なのでしょうか。それとも不要なものなのでしょうか。手始めに意思決定場面に
おける感情について考えてみましょう。ビジネス、マネジメントは意思決定の連続です。例えば、あるプロジェクトにGOサインを出すか出さないかという場面
です。定量的な判断では何とも微妙な場面です。定量的な判断基準で言えば、五分五分、あえてどちらかといえば不可という状況です。ただ、プロジェクトチー
ムのメンバーは全員がこの何ヶ月か一生懸命取り組んできて、チーム内の士気も極めて高いという状況です。さて、マネージャーであるあなたはこの場面で定量
的な基準だけでプロジェクトを不可にするでしょうか。仮にGOサインを出すという意思決定をした場合、その意思決定基準は何になるでしょうか。そうです、
その意思決定基準は「やってみよう」、「任せてみよう」或いは「期待してみよう」といった感情になります。
今度は人事考課における感情について考えてみましょう。人事考課において感情は必要でしょうか。それとも人事考課上は感情は邪魔となるものでしょうか。
人事考課を適正にできなくなる代表的な心理効果として、ある顕著な特徴から他のことがらまでを判断してしまうハロー効果、被評価者間の差別化をよく思わな
いことから生じる中心化傾向、あるいはその逆に被評価者間の差をつけようと極端な評価をしてしまう極端化傾向などが知られています。これらは認知バイア
ス、感情バイアスという認識、感情の歪みからくるエラーです。人事考課の際はなるべく感情、私情をとりのぞくということが原則です。そのため、なるべく感
情、私情を"排除"して適正な評価をしようと努めます。しかし、本当に感情は"排除"できるものなのでしょうか。
今そこにある感情
定量的な判断だけでは成り立たないからこそ、ビジネスは簡単ではないのです。何でもかんでも定量的な判断だけでビジネスが成立するのであれば、これほど
簡単なことはないでしょう。ビジネスの意思決定においては必ずと言っていいほど、感情がからみます。これまでどういう訳か建前的にはビジネスシーンでは感
情を取り除こうとしてきました。しかし、現実の世界では感情がビジネスシーンにおいて大きな役割を担っていることは誰もが知っていることでした。
感情は、頭あるいは心のどこかにある部品で、着脱可能なものではありません。感情はあなた自身がいる限りあなたと一緒に存在します。ですから、排除すれば良いと考えたとしても、文字通り排除できるわけではないのです。
一見するとアメリカのビジネスシーンの方がクールで、徹底して定量的な判断の下にビジネスの意思決定をしているように見えました。もちろん、そうした面
もあります。しかしその一方で、アンガーマネジメントをビジネスに積極的に取り入れるようになったのはアメリカです。これは大きな皮肉なのかもしれませ
ん。ノースカロライナ州にあるクリエイティブリーダーシップセンターの研究によると、エグゼクティブの中で、特にプレッシャーを与えられた状況下で感情、
怒りをコントロールすることができないことは、昇進の機会を失う、解雇される、退職を勧告される最も大きな要因となっています。
今、アメリカのビジネスシーンで取り組まれているアンガーマネジメントは、感情を排除するのではなく、感情はそこにあるものとしてマネジメントしていくという選択肢を選ぶというものです。なぜなら、感情そのものを排除することは現実的ではないと理解されているからです。
次回以降、アメリカのアンガーマネジメントの歴史やビジネスシーン以外での使われている分野、アンガーマネジメントを受けることによるメリット、実践的なテクニックなどについて紹介していきたいと思います。
第2回 アンガーマネジメントが必要とされている理由
はじめに
アンガーマネジメントは米国では1970年代に始まったとされています。当初は怒りをコントロールすることに焦点が当てられていましたが、研究の進展、時代のニーズに合わせて内容が多様化してきました。
本稿のテーマであるビジネスシーンでのアンガーマネジメントもそうですが、プロスポーツ選手のメンタルトレーニング、青少年教育のためのプログラム、一般的な人間関係、軽犯罪者の教育プログラムなど現在では様々な分野でアンガーマネジメントが応用されています。
アンガーマネジメントの目的
アンガーマネジメントの目的は、簡単に言ってしまえば、認識のゆがみの修正と行動の修正です。このことを理解するためには、感情と行動が生まれるメカニズムについて理解する必要があります。感情と行動はおおまかに言うと、このような順番で生まれます。
1.ある出来事があります。2.その出来事を認識します。3.認識することで意味が生まれます。4.意味を受け取り、感情が生まれます。5.行動します。
問題なのは、ある出来事をどうやって認識しているのか、最終的にどのように行動するのかというところです。
例えば、ある人が上司から資料の間違いを指摘されたとします。その人は、自分のことをけなされたと認識するかもしれません。ある人は間違いを指摘されているだけと認識するかもしれません。同じ出来事であっても、人によって認識の仕方は変わります。認識の基準はこれまでの経験、体験、教えられてきたことなど長い間かかって作られたその人だけのものです。
もしその認識の基準が自分や周囲にとってプラスにならない行動を引き起こす原因となるのであれば、その認識の基準を修正していく必要があります。この修正を行って行くのがアンガーマネジメントの目的です。
現実をゆがめさせるコアビリーフ
認識の基準のことをアンガーマネジメントではコアビリーフと呼びます。コアビリーフとは、自分の価値観を形作るもの、自分の価値観のコアとなるものです。人はあらゆる事柄について様々なコアビリーフを持っています。
例えば、「会社とは何ですか?」と質問すれば、会社とは給料をもらうところ、生活をするのに必要なところ、自己実現をする場所、したいことをするところ、本来の自分とは関係のない場所、戦うところ、などなど、答えは人それぞれでしょう。この質問に絶対的な正解というのはありません。そして誰も自分の正解を他人に押し付けることはできません。
多くの場合、コアビリーフは現実をゆがめて認識させます。コアビリーフは自分の経験を通じて作られます。当然のことですが、自分の経験で作られる価値観は自分にとっては当たり前、正しいことでも、他人にとっては全然そうでないことが多々あります。
ほとんどの人は今目の前にある世界を、こうであって欲しいという視線で見ています。本稿をお読みのあなたも、「べき」という言葉をよく使うと思います。部下は上司の言うことを聞くべき、残業すべき、こう話すべき、こう考えるべき、そうするべきではない・・・。
これらは一体何でしょうか。 ここで自分がよく思う「べき」を挙げてみてください。それらはなぜ「べき」なのでしょうか。
実は、この「べき」は認識を大きくゆがませるものの一つなのです。「べき」は自分の欲求でしかありません。「べき」は法律でもなければ、ルールでもありません。自分がそうであって欲しいと思っている価値観でしかない場合が多くあります。
自分が一日に一体どれくらいの「べき」を使っているのか数えてみましょう。驚くほど多くの「べき」を持っていることに気づくはずです。自分では知らず知らずのうちに、多くのことで自分の欲求で物事を認識し、感情を生まれさせ、行動しているか気づくでしょう。
例えば、アンガーマネジメントではこの「べき」に取り組みます。自分の「べき」が自分の認識、感情、行動に与える影響はどのようなものがあるのか。そしてそれが本来の目的にとってマイナスな影響を与えるのであれば、修正していくトレーニングをします。
エグゼクティブがアンガーマネジメントを必要とする理由
米国ではアンガーマネジメントはFortune 500企業のエグゼクティブが積極的に受けています。彼らがアンガーマネジメントを取り入れる理由は、現実を正確に見て、その場面で必要な選択を迅速に正確に意思決定することがこれまで以上に求められているからです。
今自分が感じている感情は何なのか、この感情はどのような認識によって生まれたのか、そしてその認識はどのようなコアビリーフによってされたものなのか、そのコアビリーフはゆがんでいないのか・・・。
コアビリーフにゆがみがあれば、認識がゆがみ、ゆがんだ認識よって感情がうまれ、行動がなされます。前回も書きましたが、感情は排除するもの、できるものではありません。その感情が一体どのように生まれてきたのかを知ることで、その感情に対処し行動を選択することができるようになるのです。
米国のエグゼクティブ達がアンガーマネジメントに求めているもの、それは目の前にある世界を自己都合で解釈するのではなく、正確にあるがままに受け入れる能力を身につけることなのです。
第3回 応対は、反射ではなく、反応で
はじめに
2006年サッカーワールドカップドイツ大会の決勝戦。フランス対イタリア戦。サッカーファンでなくても記憶に残る試合だったのではないでしょうか。なぜなら、フランスのキャプテンのジダン選手が、イタリアのマテラッティ選手に頭突きをして退場になった出来事があったからです。
世界のトップアスリートが、世界一を決める大会で、しかもジダン選手にとっての引退の花道となる試合での出来事に世界は騒然としました。
試合の結果はご存知の通り、フランスは負け、イタリアがワールドカップを制しました。
本来の目的、目先の感情
世間は、なぜ彼は大舞台であのようなことをしたのかというジダン選手に疑問を呈する側、いやマテラッティ選手が人種差別発言をしたのが悪いなどジダン選手を擁護する側とに分かれて様々な論争を繰り広げました。
本稿では当然のことながらアンガーマネジメント的に考えた場合、この出来事から何が言えるのかということを書きます。
アンガーマネジメント的に言えば、ジダン選出の頭突きは、本来の目的達成を阻止する意思決定であり、行動です。ジダン選手は、あの試合に望んだ本来の目的は、チームに貢献してフランスを優勝に導くということだったはずです。彼は自ら現場を放棄して、そして自分の役割、責任を放棄したことになります。
相手が人種差別発言をした、侮辱をしたということは関係ありません。ここでは道徳や倫理を問うているわけではありません。人種差別発言が許されないものというのは当然の前提です。だとしても、その発言に対する意思決定、行動が自分の責任を放棄するものであってはなりません。
チームの要となる人間がその役割や責任を途中で放棄してしまったらどうなるでしょうか。この事例は会社にもそのまま置き換えることができます。チームの要となるマネージャーが自らその役割、責任を放棄してしまったとしたら、どうなるでしょうか。
感情にコントロールされる
ジダン選手は、頭突きをした瞬間、頭突きをしようと決断した瞬間、試合に臨んだ本来の自分の目的を忘れていました。忘れていたというよりも、目先の感情の方が本来の目的よりも大事になった瞬間があったということです。
本稿でこれまでに何度か書きましたが、感情は自ら作り出し、自らコントロールするものです。決して感情があなたをコントロールするものではありません。しかしながら、アンガーマネジメントを、感情をコントロール、マネジメントする技術を知らなければ、人は簡単に感情にコントロールされてしまうのです。
世界のトップアスリートとしてメンタルトレーニングをしている人ですら、感情にコントロールされてしまうのです。私たちもビジネスにおいて、普段の生活において、言う必要のないことを言ってしまった、する必要のないことをしてしまったことなどは枚挙にいとまがないでしょう。
反応を遅らせるテクニック
人は瞬間的に感情を作り出しているように見えますが、実はそうではありません。感情が生まれるまでの前段階があります。アンガーマネジメントではその予兆に気づくトレーニングもするのですが、今回は実際に感情が生まれてしまった時の対処策について紹介します。
カチンときた、ムカッときた、あるいは衝動的に何かを言いたくなった、したくなった時に対処する戦略をいつでも準備しておくことです。これをディレイ(Delay)テクニックと言います。感情に対する反応を遅らせるテクニックです。
ディレイテクニックには様々なものがありますが、今回は一つだけ、私自身もよく使うテクニックを紹介します。
それはストップ・シンキング(Stop Thinking)というテクニックです。これは怒りなどの感情の元となる意味付けや思考そのものを停止させるものです。自分が何か衝動的になりそうになってしまいそうになった時、自分自身に「止まれ!(Stop!)」と言い聞かせます。その言葉を合図にすべての考えをやめるよう努めます。
何かを言われて、それに対して感情的になるのであれば、それを自分の中で繰り返さない。何かを見て、それに対して感情的になるのであれば、それを自分の中で思い返さない。
多くの場合、人は自ら感情的になろうとしてしまいます。相手は一度しか言っていないのに、それを何度も自分の中で繰り返して感情を増幅させることはよくやっています。
すべての考えを止めてください。解決策を考えるのも、原因を考えるのも、理由を考えるのも、すべてをやめます。思考をやめることで、瞬間的に反応することをやめます。
反射的に応対するのではなく、思考の上で応対するのです。反射的に応対すれば、ほとんどの場合で良い結果は得られないでしょう。それは私たち自身が経験の中で良く知っています。
ストップ・シンキングはほんの少し練習すれば、誰にでも簡単にできるようになります。ぜひ試してみてください。
第4回 ビジネスパーソンのメンタルトレーニング
はじめに
「私だって寝てないんだ!」この台詞を覚えているでしょうか。数年前の事件です。この台詞は某社社長がメディアに囲まれながらエレベータに乗る際、メディアにむかって叫んだ言葉です。事件のことはあまり覚えていなくても、この状況を思い出せる人は多いかもしれません。
某社は事件後に解体されましたが、もしあの時、社長がメディアや国民にむかって違う対応をしていたら、違った結果になっていたかもしれません。
「消費者が安いのを欲しがるからだ!」今度はこの台詞を覚えているでしょうか。これは去年、食品偽装が問題になる中、某社社長が発した言葉です。彼が言ったことは確かにそうかもしれませんが、食品偽装を行った会社の社長が言ってはいけないことだったでしょう。
あなたは毎日試されている
時として顧客、取引先、上司、部下、株主、メディアはあなたに意地悪な質問や物言いをしてきます。その度ごとにいちいち怒ったり、感情的になっていられません。一歩譲って、怒ったり、感情的になったりするのは今の段階ではある程度は仕方がないものとしましょう。しかし、怒って何かを言ってしまったり、感情的になって言ってはいけないことを言ってしまったり、してしまったらどうなるでしょうか。
プロフェッショナルなビジネスパーソンは職務についている間、プロフェッショナルに徹します。プロフェッショナルに徹するとは、自分の本来の目的を最優先させます。自分の怒り、感情は最優先にはなりません。アマチュアのビジネスパーソンは怒りや感情に振り回され、本来の目的を逸脱することが多くなります。
プロフェッショナルは、今自分がしなければいけないことと同様に今の自分の状態(精神的、肉体的)を良く理解しています。なぜなら、今の自分の状態を知らなければ、ベストなパフォーマンスが発揮できないからです。
ビジネスパーソンのメンタルトレーニング
私たちの仕事におけるパフォーマンスは、自分の気持ちの状態や肉体の状態に大きく左右されることは何となく知っています。例えば、モチベーションの低い時は能率が上がりませんし、風邪をひいている時には生産性は上がりません。
プロのアスリート達が行うように、ビジネスパーソンにもメンタルトレーニングが必要です。ビジネスパーソンにとってのメンタルトレーニングは、自分自身の怒りをマネジメントし、モチベーションを上げ、業務の成果が最大になるよう感情のコントロールをすることです。そして、感情の中でもビジネスにとって大きな傷害となる怒りの感情に特に意識を置くことが求められます。
今回はアンガーマネジメントの中で重要なアンガー・ログを紹介します。アンガー・ログとは、怒りの記録のことです。自己観察をする上でとても有用なツールです。自分がどのような怒りを感じているのかを、実際に記録することで、自分の怒りについてより深い理解をすることができるようになります。
アンガー・ログは次の要領で記録をつけます。
| 日時: |
怒りを感じた日時を書きます。 |
| 状況: |
怒りを感じた状況について簡潔に状況だけを書きます。 |
| 思ったこと: |
その状況をどう思ったのかを書きます。 |
| 感情: |
その時、どのように感じたのかを書きます。 |
| 感情の強度: |
10段階で計ると、どの程度の強さだったのかを書きます。 |
| 怒りのトリガー: |
怒りを感じるきっかけとなった感情を書きます。 |
| 行動: |
どのような行動をとったのかを書きます。 |
| 異なる考え方: |
別の視点からその状況を考えるとしたらどのように考えられたのかを書きます。 |
アンガー・ログは怒りを感じるごとに記録してください。1日に何度も感じるようであれば、1日に何度も記録をしてください。記録をつけることで、目に見えなかった自分の怒りの感情を目に見えるようにすることができます。目に見えるようにすることで、自分の怒りの感情を理解しやすくなり、同時に怒りの感情の問題に対処しやすくなれます。
最初のうちは面倒くさく感じるかもしれませんが、記録をつけるうちに自分の怒りのパターンなどが発見でき、自己観察することが興味深くなるでしょう。
| 日時: |
4月23日(水)15時 |
| 状況: |
社内で新しくプロジェクトのプレゼンをしていた際、上司から醜く批判され、修正案を今日中に作成するように言われた。 |
| 思ったこと: |
上司は何もわかっていない。プロジェクトがもたらす利益を過小評価している。 |
| 感情: |
怒り。苛立ち。認められないことへの悔しさ。 |
| 感情の強度: |
7/10段階 |
| 怒りのトリガー: |
屈辱。自分をバカにしている。自分を評価していない。 |
| 行動: |
自分が怒っていることをわからせるため、修正案を出さずに帰った。 |
| 異なる考え方: |
自分の利益計算にもあまい点があったのかもしれない。上司の言葉は批判ではなく、彼の心配の裏返しだったのかもしれない。心配しすぎるあまり、言葉が強くなってしまったのかもしれない。 |
第5回 ビジネスパーソンのメンタルトレーニング その2
はじめに
今回は怒りの感情に密接に関係しているストレスに対処するための方策について紹介したいと思います。
アンガーマネジメントでは、怒りそのものをなくしたり、抑制するのではなく、怒りの感情によって生まれる行動を修正したり、不要な怒りが生まれないよう認識の仕方を修正することは以前書いた通りです。ストレスに対処する方策もこれに通じるものがあります。
私達は生きている以上、ストレスから解放されることはありません。ストレスに対処するには、ストレスをなくしたり、ストレスから逃れたりするのではなく、ストレスに対して強い耐性を作り上げることを目指します。
自分にとってのストレスとは?
自分にとってのストレスとは一体何でしょうか。仕事のプレッシャー、人間関係、疲労、病気、忙しさ、睡眠時間など様々なものがストレッサーとなります。ある人にとってはストレスになるものでも、ある人にとってはストレスにならないものもあります。例えば、仕事の忙しさを楽しい、やりがいがあると感じる人もいれば、仕事が暇だと手持ち無沙汰でストレスを感じる人もいます。
ストレスは自分自身の思考の中にあるとも言うことができます。これはある出来事を見て自分自身にとって居心地の悪いものと認識した時、ストレスが生まれるからです。
ストレスを専門的に言えば、ストレスとは生物体が恒常性(ホメオスタシス)を維持できない生理的なひずみのことです。自分が要求しているものと現実とのミスマッチと言い換えることもできるでしょう。
自分にとってストレスとなるものには一体どのようなものがあるでしょうか。一度書き出してみることをお勧めします。
ストレスがあなたに与える変化
人はストレスを感じると、身体に変化が現れます。短期的な変化としては、心拍数の増加、呼吸が速くなる、口が乾く、筋肉が緊張する、胃が痛くなる、手足が冷たくなるなどです。これが慢性的にストレスを受け続けていると、頻繁に体調を崩したり、慢性的に疲れたり、消化器系に問題が表れたりするようになります。
自分はストレスを感じたときに、どのような身体的な変化が現れるでしょうか。そして、それを自覚することはできているでしょうか。
ストレスに対処するための3つのスキル
ストレスに対処するためには、次の3つのスキルが重要です。それは、1.ストレスを自覚する、2、ストレスを受け入れる、3.ストレスに対処する術を持つ、です。
ストレスは自分が自分自身に向けて発信するシグナルです。このシグナルを認識することがストレスに対処するための第一歩となります。ストレスを受けることによって、身体的、思考的、感情的にどのような変化が自分に現れるのかを認識するよう心がけましょう。
次にストレスの原因となるものに関して、あなたは現実的になる必要があります。もしストレスの原因となるものが、あなたの力の及ばない何かであるならば、それは受け入れるほかに選択肢はありません。一方で、ストレスの原因となるものが自分の力で変えることができるものであるならば、自分の責任でストレスの原因となるものを変えていくという選択肢をとることができます。
そして、最後にストレスに対処する術を持つことです。これはストレス発散のための方法を見つけておき、常にできるようにしておくことです。読書、スポーツ、料理、ヨガ、瞑想等々、何でも構いませんんので自分なりにストレスに対処できる方法を見つけてください。
ただし、過度の飲酒や喫煙などはかえって身体にストレスを与えることにもなりますので、注意が必要です。
ストレス・ログ
多くの人は、自分が自分の責任で変えられるもの、変えられないもの、重要なもの、重要でないものの区別を上手くできていません。そのため、漠然としたストレス、不安、心配に悩まされてしまうのです。これらを区別することは非常に重要です。これらを区別することで、自分がとれる選択肢をはっきりとさせることができるからです。
ストレス・ログは自分のストレスを分析するのに有用なツールです。漠然と感じているストレスを客観的に分析することができます。
このストレス・ログを使って、自分の責任で変えられるもの、変えられないもの、重要なもの、重要でないもの、を書き出してみましょう。そして、繰り返しになりますが、自分の責任で変えることができるものについては、自分の責任で変えるという選択をとっていきましょう。
自分で変えられる/重要
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自分で変えられない/重要
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自分で変えられない/重要でない
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自分で変えられない/重要でない
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第6回 ビジネスパーソンのメンタルトレーニング その3
はじめに
私たちは日常生活の中、ビジネスの中で知らず知らずのうちに多くのパターンにはまっています。例えば、毎日の通勤経路はどうでしょうか。通勤経路を毎日変える人はいないと思いますが、週に一度でも変える人はどのくらいいるでしょうか。オフィスでの行動はどうでしょうか。オフィスについて、パソコンの電源を入れ、コーヒーを飲み、メールに目を通す。取引先とは同じ問題で何度も連絡しあい、社内会議ではいつも同じ議題を繰り返す。毎日同じ行動をしているのではないでしょうか。
今回は、こうしたパターンを積極的に壊していくという方法、メリットについて紹介します。
ワンパターンは居心地がよい
「毎日同じことの繰り返し」「どうして毎日同じ問題ばかり起こるんだ?」「変化のない人生だな」等々。毎日が同じことの繰り返しで、自分は一体いつまで同じことを繰り返せばよいのか考えると辟易することも多くあります。
しかし、多くの人は、あえてワンパターンを選んでいると言ったら驚くでしょうか。実際のところ、多くの人は、自らワンパターンを選択しています。そんなはずはない。自分は毎日を変えたくて仕方がないと反論する人も多いのも事実でしょう。ただ、本当にそう思っているのでしょうか。
ほとんどの人は同じ問題を繰り返せば、もう二度とこんな問題は起こすまい、悩むまいと思います。同じことの繰り返しに辟易していれば、何とか現状を変えていきたいと思うでしょう。ところが、現実には変えられない人が多いのです。変えられないというよりは、実は心の奥底では変えたくないと思っている人が多いのです。
人はその現状に満足していようがいまいが、なるべく今の状態を保とうとします。人は基本的に変化を嫌います。余程意思が強くなければ、自ら変わることはしませんし、例え目的があったとしてもなかなか変われません。
ビジネスの現場では業務改革、社内改革、改善といった変化をわざと起こすことをよく行います。そして、その度に猛烈な反発があることを私たちは知っています。自分が改革をする立場になれば、変えれば良くなるのになぜ変わりたくないのだ?と思い、自分が改革される立場になれば、なぜそんなことをわざわざ変える必要があるんだ?と思います。会社として目的をもって変革しよう、改革しようと行動をしても、そこにあるのは大きな反発です。人はそれぐらい変わるのを嫌がるのです。
Do One Thing Different
それでも同じ問題に繰り返しぶつかり、頭を悩ませるようであれば、そのパターンは壊した方が良いでしょう。パターンを壊すことを、アンガーマネジメントでは文字通りブレイクパターンと言います。
ブレイクパターンをする時のポイントは一つです。それは、"Do one thing different"(一つだけ違うことをする)です。変化を作ろうとするとき、どうしても一度に多くのことを変えたいと思ってしまいます。しかし、前述した通り、人は変化を嫌います。一度に多くのことを同時に変えようとしても、ハードルが高くなかなか変わることができません。また、一度に多くのことを変えるのは大変です。
そこで、いつもと同じパターンにはまっているなと感じたら、いつもと一つだけ違うことをしてみて、変化を作ってみるということです。
一つだけ変えても上手くいかないかもしれません。上手くいかなければ、他のことを一つ変えてみれば良いのです。そして、小さな変化が作れる、一つの違うことを見つけるのです。小さな変化を作ることができれば、そこからパターンを壊していけばよいのです。
Do one thing differentのもう一つのメリットは、一つずつ変えていくので、そのパターンを壊すのに何が一番有効なのかを見極めやすいということです。一度に多くのことを同時に変えてしまえば、結局何が有効だったのかを見極めづらくなります。
人は同じような傾向のパターンにはまります。そこで、自分が陥りやすいパターンを壊すのに有効な何か一つの違うことが見つかれば、それは他のパターンを壊すときにも役立つことがあります。
自分が陥りやすいパターン、そしてそのパターンを壊しやすい何か一つの行動、これを探していってください。自分が陥るワンパターンをいつでも壊せる人は、どのような状況になっても、楽々とその状況を乗り越えることができます。自ら変化を作り出す、自らパターンを壊す能力に注目をしていってください。
第7回 怒りやすい人の特徴
はじめに
世の中には怒りやすい人とそうでない人がいるのは事実です。同じような出来事を体験しても、ある人にとってはどうでもいいと感じるでしょうし、ある人にとっては怒らずにはいられないということもあります。
怒りやすいといっても、怒りを顕にする人もいれば、怒りを内にためこむ人もいます。また、怒りをためこむ人の中には、自分は怒っていない、自分は関心がないという振る舞いをすることで怒りを表現する人もいますし、怒りの感情を静かに深く誰にもわからないように押し込んでしまう人もいます。自分が怒っていることを自覚しない、できない場合もあります。
なので、一見すると怒っているように見えないからといって、その人が怒りを感じていないということはありません。
アンガーマネジメントというと、どちらかというと直情的に怒りを表す人を対象にしていると思われがちです。でも実際には、怒りを内に溜め込む人の方が多いのです。そしてそういうタイプの人の方が自分の怒りに向き合うことが難しくなっています。
そこで、今回は怒りやすい人の代表的な特徴を紹介しますので、自分に思い当たるふしがあるかどうかを考えてみてください。
白か黒かをすぐに決めたがる
「お前は仕事をやる気があるのか、ないのか!」「どちらが正しいんだ?」といった具合に、物事を白か黒か、良いか悪いか、0か1かの二つに分けて決めようとします。世の中にはきれいに二分できるものというものは実はそれほど多くありません。それにも関わらず、両極端に二分化して考える人は、中立的な立場をとることが上手ではなく、判断基準が感情的です。判断基準が感情的ということは、感情的になりやすく、怒りやすいということです。
応報的な考え方をする
「絶対に仕返ししてやる。」「ルールを破った奴は罰せられるべきだ。」復讐、懲罰的な考え方をすぐにする人のことです。間違い(自分の信念や価値観に照らし合わせて間違っているということ)をおかした人にはそれに対する報いがあるはずだと信じています。自分が何かをされたら仕返しをしなければ気がすみません。いつまでも怒りを忘れず、長い期間怒りが持続します。
相手に対して求めすぎる
自分が要求したことを相手が聞いてくれないと我慢ができません。自分が相手のためを思ってこうしているのだから、相手はそれに応えるべきだと考えています。自分の欲求と相手の権利をごちゃごちゃに考えてしまっています。本来は、自分が求めたからといって、相手はそれに応えなければいけないということはありません。自分の欲求、権利、義務、相手の欲求、権利、義務を切り離して考えることが苦手です。
何事も決め付けやすい
「お前はこういう人間だ。」「いいや、絶対そういうつもりで言ったに決まっている。」物事や出来事にはいろいろな側面がありますが、物事や出来事を多面的にとらえることが上手にできません。思い込みが強く、一度そうだと自分の中で結論づけてしまうと、その結論を覆すことができません。また、一つの事柄を見て、他の全てのことまでを判断してしまいます。例えば、時間にルーズな人間は仕事ができない、子供が嫌いな人は性格が悪い、などです。
ストレスに弱い
ストレスに対して耐性が低いことも怒りやすい人の特徴です。ストレスがたまってくるとイライラして激高しやすくなったり、逆に怒りを内側にためてしまいます。ストレスに耐性が低いと、少しストレスが高くなると、その状況に耐えられなくなってしまし、精神的にまいってしまったり、胃痛、頭痛などの肉体的な症状もでます。例えば、職場を休みがちになってしまったり、責任ある仕事から逃れようとしたりします。
完璧主義
自分は間違いをしてはいけない、自分は失敗をしてはいけない、100%の自信が持てるまでは前に進めない、何事もきちんと理解しなければ気がすまないと考える傾向にあります。ただ問題は、完璧主義の人の言う完璧とは、自分の価値観において完璧ということです。世の中には完璧というものは多くはありません。そのため、完璧主義の人が完璧と思っても、他の人にとっては特に完璧でないことが多くあります。完璧主義の人は他の人からの批判に弱いという特徴も持っていますので、自分が完璧と思っていることを批判されると、怒りでその批判に応えようとしやすくなってしまいます。
自分がどのような特徴や傾向を持っているのかを知ることは、怒りをコントロールする上でとても重要です。日頃から自分がどのような特徴や傾向を持っているのかを"認識"できるよう努めてみましょう。
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